• ふるさと納税 仲介サイト手数料1656億円が示す制度の構造的問題

ふるさと納税 仲介サイト手数料1656億円が示す制度の構造的問題

2025.07.31

目次

ふるさと納税の経費構造と自治体財源への影響

2024年度の仲介サイト使用料は寄付額の13% 総務省が初公表

  • 総務省の発表によれば、2024年度にふるさと納税で自治体が仲介サイト側に支払った手数料は1656億円に達し、全体の寄付額の13%を占めた。これまで詳細が明かされてこなかった仲介サイトへの支出が初めて公表された。
  • この支出に加え、返礼品や事務費、広告・決済費を含めると、自治体に残るのは寄付額のわずか54%にとどまる。ふるさと納税が財源移転として機能しているのか、その実態に疑問が投げかけられている。

全体の経費は5901億円 寄付の半分が自治体に届かず

  • ふるさと納税の2024年度の経費総額は5901億円で、前年より9%増加した。経費比率は46.4%と前年より2.2ポイント下がったが、依然として寄付のほぼ半分が自治体以外に流れている。
  • 内訳は、返礼品が25%、事務費13%、広告・決済費8%、仲介サイトが13%、自治体に残るのは54%。この構造が毎年続けば、自治体が得られる実質財源は限られる。

都市部では税収流出が拡大 横浜市が全国1位の減収

  • 25年度の控除額で最大の減収となったのは横浜市で、控除額は343億円、対象者は47万人にのぼった。前年より控除額は13%、対象者数は7%増加している。
  • 2位は名古屋市(198億円)、3位は大阪市(192億円)。都市部では税収が控除によって流出し、地方への移転どころか「都市の減収」として機能している側面がある。

高所得者に有利な設計 構造的ゆがみも浮き彫りに

  • 高所得者ほど税負担が大きいため、多額の寄付が可能であり、結果として高額な返礼品を得られる制度構造となっている。都市部の減収は、こうした高所得者の存在と重なる。
  • 本来の「地方支援」の意図とは逆に、高額寄付の見返りとして手厚い返礼品や手数料ビジネスが膨張し、公費の私企業流出を招いているという批判が強まっている。

総務省は制度維持の姿勢 弊害への指摘も

  • 総務省は、返礼品の存在や都市部からの税流出については「やむを得ない」とし、制度自体の維持に前向きな立場をとっている。ふるさと納税が地方の財源確保に貢献しているとの見解だ。
  • 一方で、制度の弊害を指摘する声も強まっており、ニッセイ基礎研究所の高岡和佳子氏は「募集経費の上限引き下げや、税控除の縮小が必要」と述べ、制度の構造把握と是正を国に求めている。

政治的意図と広告的設計の交差点としてのふるさと納税

  • ふるさと納税は当初、地方活性化を目的とした仕組みだったが、現状では広告費・仲介料・返礼品競争が先行し、マーケティング戦略として利用されるケースも増えている。
  • 自治体と民間企業の間で「どれだけ目立ち、どれだけ得を見せるか」という広告発想が強まり、制度本来の趣旨が薄れている。この構造的歪みにこそ、真の問題がある。

制度の継続か、再設計か 公費の使途に透明性を

  • ふるさと納税を巡っては、今後ますます「広告型行政」「パフォーマンス型政治」との接続が強まる恐れがある。返礼品の豪華さや手数料の過剰さは、公的資金の使途として適切かどうか、社会全体で再検討すべき時期に来ている。
  • 税の公平性、都市と地方の格差、制度に対する信頼性の観点からも、透明性のある費用構造と、本来の「寄付」の意味を取り戻す制度設計が求められている。

出典