• 排外主義と憲法14条をめぐる現実 外国人差別と制度の矛盾

排外主義と憲法14条をめぐる現実 外国人差別と制度の矛盾

2025.07.11

目次

はじめに

背景と問題意識

  • 現在の日本社会では、外国人への差別や偏見が顕在化している。これは労働者や移民への対応、差別デモ、ヘイトスピーチ、さらには政治家の排外的発言にも現れており、日本国憲法第14条「法の下の平等」との齟齬が明確になっている。

外国人労働者・移民への対応

技能実習制度と構造的差別

  • 在留外国人数は2024年末時点で約376.8万人に達し、深刻な人手不足への対応策として外国人労働者が制度的に受け入れられている。しかし技能実習制度では、実質的に安価な労働力として扱われ、劣悪な環境・人権侵害が批判されている。
  • 技能実習制度では、「研修」と称して低賃金労働を強いられる例が多く、失踪事件や労災死、賃金未払いが後を絶たない。日本政府は制度廃止と新制度への移行を検討しているが、「人手不足対策」としての構造は温存されており、抜本改革とは言い難い。

特定技能制度と「非移民政策」

  • 特定技能制度の導入により、より長期的な在留資格も可能となったが、あくまで「一時的労働力」として扱われており、家族帯同や永住などの統合政策は不十分。日本政府は「移民政策」という用語を避け、社会的にも対等な存在とは見なされていない構造的差別が指摘される。

ヘイトスピーチとネット上の差別

クルド人コミュニティへの攻撃

  • 2023年以降、埼玉県川口市などで在日クルド人を対象とした排斥デモが継続的に発生。司法は2024年、周辺600m以内でのデモ禁止を命じるなど画期的な判断を示したが、社会的恐怖や不安は依然強い。

SNSにおける誹謗中傷と情報操作

  • SNS上では根拠のないデマや差別扇動が日常化し、「クルド人が治安を悪化させている」などの虚偽情報が拡散され、ヘイトデモを助長する構造が形成されている。川崎市など一部自治体では条例による抑制が見られるものの、ネット上では匿名性により拡散が加速している。

「外国人優遇」というデマ

  • 世論調査では「外国人が優遇されている」と信じる層が6割超に達するが、実際には税や保険料を納めた上で制度に「準用」されているだけであり、「外国人特権」は事実無根。差別感情を煽る構造的デマがネットとデモ現場で拡散されている。

入管政策と人権侵害

難民認定の厳格さと制度の限界

  • 2023年、日本の難民申請者は13,823人に達したが、認定されたのは303人(約2.2%)にとどまる。アフガニスタンやウクライナからの避難民に対しては保護措置が取られたが、他国からの申請者には依然として厳しい判断が続いており、真に庇護を求める人々が保護されない問題がある。

入管収容と仮放免制度

  • 名古屋入管でのウィシュマ・サンダマリさん死亡事件を契機に、2023年に入管法が改正されたが、反復申請者への送還制限回数を「2回まで」と制限する条項には人権団体からの強い反発がある。生命の危険があるにも関わらず、形式的に送還可能となる制度設計が批判されている。

死亡事件と司法の判断

  • 入管収容中の死亡は18件以上報告されており、医療放置や管理不備が要因とされる。2024年、最高裁は初めて国の責任を認め賠償を命じたが、実態の透明性や証拠管理の不備は依然解消されていない。「外国人の命は軽い」とする構造的偏見が、制度設計に根深く残っている。

出典